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2008.08.22
[2008.08.22]


 泣きたくてたまらないのに、涙が出てこないで画面を凝視してしまう。息を呑み釘づけになったまま、ラストまで体が動かせない。そんな映画に初めて出会いました。
 8月に入ってから全国主要都市(札幌、東京、川崎、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡)で上映中の『闇の子供たち』という作品は、ぜひ観ていただきたい、早見の強力イチ押し映画です。
 原作は『闇の子供たち』(幻冬舎文庫)。こちらを読んでいただくのもお勧めです。

 舞台は東南アジアのタイ。貧しさゆえに人身売買で連れてこられた幼い男の子や女の子たちは、売春宿で日本人や白人を中心とする幼児性愛好者たちによって、身も心もズタズタにされていきます。逃げようにも監獄同様の状況で逃げられない。
 エイズにかかった子供は、ゴミ袋に入れられて捨てられていきます。ゴミ処分場でゴミ袋を破った女の子は、息も絶え絶えに這うようにして故郷にたどり着きますが、そこで再び家族に見捨てられ、孤独のうちに死んでいきます。
 そして、日本では認められていない子供の臓器移植。なんとタイでは、人身売買で連れてこられた子供が、生きたまま移植用に臓器を切り取られ、殺されていく。
 人身売買、幼児売春、違法な臓器移植による殺人。こうしたマフィアや警察、医師までもが絡んだ闇のネットワークに、新聞記者や人権を守るNGOが追求の手を伸ばすのですが…。
 原作者が映画化は絶対無理だと確信していた実録を阪本順治監督が、あふれるほどの熱意で素晴しい映画に仕上げ、世に送り出しました。
 大河ドラマ『篤姫』で大人気の女優・宮崎あおいさんは、正義感だけで突っ走るNGO職員を演じていますが、彼女は個人的にこうした問題に強い関心を持ち、「何かしたい」と常日頃思っていたそうです。その生真面目な青さが、それゆえに心からの叫びとなって、セリフにそのまま現れています。
 虐待される子役の子供たちも、あらかじめこの問題を十分に認識、理解して、キワどい演技をしっかりとこなしました。
 この映画はノンフィクションであり、かつありきたりの単なるお涙ちょうだい物ではありません。すごく硬派のサスペンスタッチになっています。
 では、なぜ泣けなかったのか。主役の新聞記者(江口洋介)が、臓器移植の臓器提供者として殺されに行く女の子の顔を「しっかりと見ておけ!!」と同僚のカメラマンに怒鳴ります。
 かわいそうだと泣いて同情することは簡単ですが、泣けば済む問題ではありません。今この瞬間にも虐待され、殺されていく子供たちは、ある意味泣くことも許されないのです。
 しかも“闇”は、私たち誰もが心の中に持っているのです。けっして他人事ではないことが、この映画ではラストまで鋭く描かれています。泣くに泣けなくなる、スゴイ映画です。


『闇の子供たち』 梁 石日(著)